窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

チャリング・クロス街84番地(DVD)

DVD視聴。

題名チャリング・クロス街84番地(84, CHARING CROSS ROAD
原作ヘレン・ハンフ
監督デヴィッド・ジョーンズ
出演アン・バンクロフト(ヘレン・ハンフ)、アンソニー・ホプキンス(フランク・ドエル)
制作USA、1986年

  • 原作は、僕が自分の意志で原書を読んだ3作品のうちのひとつ(ちなみに、残りのふたつは「かもめのジョナサン」と「ある愛の詩」)。江藤淳の翻訳がひどいので読んでみる気になったのだ。ラストの、ついに英国へ行く機会はなかったけれど、英国へ行かなくても、私の求めているものはここにあります……というセリフには涙が止まらなかった。
  • 小説(物語)ではなく、書簡集であり、言葉のやり取りに面白さがあるため、映像化できるものなのかと疑問だったが、立派な映画になっていた。ヘレンとフランクそれぞれを描くことによってやりとりを際立たせている。手紙自体は、画面に向かってお互いが語りかけることによって効果をあげていた。
  • ドエル氏が亡くなられたあとの展開は、やはり目頭が熱くなった。
  • 映画のラストは、ヘレンが英国を訪れるところで終わる。ヘレン・ハンフは確かにのちにイギリスを訪れているのだが、そこまで描く必要はなかった。いずれは行きたいと切望しながらも、さまざまな事情で断念せざるを得ず、そうこうするうちに長年の友人は亡くなってしまった。でも、イギリスへ行ったら手に入れようと思っていたものは、その友人の尽力により、既に手に入っていたことに気付く――のがこの話の肝である。原作にない、訪問するところまで描くことでちょっとテーマが散逸になった印象だ。
  • それはそれとして、本に限らないが、既にあるもの(誰かが使っていたもの)を大切にし、使用の跡は、同じ趣味の友人との会話であると喜び、先人に敬意を表して使い継いでいく……。今日の日本で最も求められていることかも知れない。以前、原作を読んだ時には考えなかったが、そんな印象も強く受けた。

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チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)

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