映画制作者は謎をかけたつもりではなかったかも知れないが、自分はずっと不思議に思っていたことがある。それは、登場人物がいやに煙草を吸うことだ。
煙草を吸うこと自体が犯罪というわけではないが、近年ではよほどの必然性がない限り、映画の中で登場人物がわざわざ煙草を吸う描写はしないのが普通である。それが、テディのみならず、主な登場人物がみな煙草や葉巻をくゆらすのは異様に感じた。
物語のラストのちょっと手前で、テディが「ミシェルが殺されたのはいつ?」と訊かれて「1952年だ」と答える場面がある。この時、はじめて、このドラマは現代のものではなく、かなり古い時代、恐らく1960年代のドラマなのだと気付いた。そういえば、精神病患者の治療にロボトミー手術とか、かなり古いやり方を持ち出してきたな、というのも気にはなっていたのだ。
考えてみれば、主人公は戦争にいき、ナチスがユダヤを虐殺したところを見たりしているわけで、その時すぐわかることなのだが、なにしろアメリカは第二次大戦後もひっきりなしに戦争をしているため、従軍経験があるといわれてもそれがWWIIのことだとはピンとこなかった。
この時代は、(少なくとも大人の男は)煙草を吸うのが当たり前で、吸わない人も吸わないでくれとは言わない(言えない)時代だったのだ。煙草を吸いたい人が気軽に吸えないのも困るが、吸わない人があれだけ煙に付き合わされるのは明らかに問題だ。なんだかんだいっても、世の中は少しずつよくなってきているのだ。
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