設定が面白い「タイム」

寿命(余命)が貨幣の代わりになる世界。物を買う時にこれは「5分」だとか、乗り物に乗る時にこれは「2時間」だとか、嫁いと引き換えに入手する。仕事の報酬もまた余命で受け取る。人間同士の余命の授受も自由。言い換えると、他人から巻き上げることもできる。……こんな設定初めてだ。

題名タイム(原題:In Time)
監督アンドリュー・ニコル
出演ジャスティン・ティンバーレイク(ウィル・サラス、スラムゾーンに住む青年)、アマンダ・サイフリッド(シルビア・ワイス、ウィルと行動を共にする富豪の娘)、キリアン・マーフィー(レオン、時間監視局員)、ヴィンセント・カーシーザー(フィリップ・ワイス、シルビアの父)、オリヴィア・ワイルド(レイチェル・サラス、ウィルの母)、マット・ボマー(ヘンリー・ハミルトン、人生に絶望しウィルに余命を与える)、アレックス・ペティファー(フォーティス、ギャング)、他
公式サイト映画「TIME/タイム」オフィシャルサイト 2012年2月公開 TOHOシネマズ 日劇他 全国ロードショー
制作USA(2012年2月17日公開)
劇場新百合ヶ丘:ワーナー・マイカル・シネマズ

感想

非常に面白く見た。なにしろ設定が斬新だ。ウィルはカジノで勝って数百年(1100年だったかな?)の余命=財産を得るが、殺人の嫌疑をかけられあっさり没収されてしまう。スラムで生きる人はだいたい余命一日分くらいしかない全く余裕のない生活を送っており、常に命懸けの状態。まあ、かなりハラハラドキドキではある。

ストーリーはある意味陳腐。一部の(富裕層の)人間が永遠の命を得るために、貧困層の人間が早死にしなければいけない、というのは、結局貧富の差が極限に開いているということであり、時間銀行を襲って時間を貧しい人に分け与えるというのは義賊と一緒。昔からあるパターンの換骨奪胎に過ぎないとも言える。

本作はそうしたテーマより、時間(余命=財産)の使い方、奪い方、与え方……といった設定そのものを楽しめばいいのだと思う。

現金を持ち歩かなくても、すべて寿命を示す体内時計でやりとりができるのは、おさいふケータイよりも便利である。しかし他人の寿命を容易に奪うことができるのが恐ろしい。

通常の金品の場合は、盗まれても預金があるだろう。蓄えのない人がなけなしのお金を奪われたら死活問題かも知れないが、それでも一日二日は食べなくても死なないので、その間に打てる手もあろう(つい先日、貧しくて餓死した人のニュースがあったから、お金がないというのは実は恐ろしいことだが……)。しかし寿命を奪われたら即死である。常に全財産(まさに全財産)を持ち歩いているわけで、危なっかしくて仕方ない。寿命を蓄えておける装置もあるようだが、金庫にしまっておいてもそこにたどり着く前に死んでしまったらそれで終わりである。

富裕層と貧困層と生活エリアを厳密に分け、簡単に行き来ができないようにしているのは、貧困層の人間にしてみれば納得のいかないことだろうが、理由はわかる。金持ち同士ならモラルを守った付き合いも期待できるが、明日をも知れない人たちと一緒に生活していたら、いつ命を奪われるかも知れないわけだから。

しかし、あまりにもあっさりと(当人の意思に関わらず)命の授受ができてしまうのは少々疑問に感じた。映画の中ではお互いに納得ずくで授受を行うか、悪意を持って奪い取るか、のパターンしかなかったが(例外として、相手が寝ている間に自分の寿命を与える、という場面も一回あったが)、うっかりミスというのはないのだろうか。一日分もらうつもりが、うっかり二日分取ってしまうとか。それで相手がstock outなら、即、死ぬわけである。怖すぎる。

曽祢まさこの「呪いのシリーズ」「呪いの招待状」……という漫画では、「闇の住人」は人の寿命をもらって「仕事」をしている。主人公のカイは寿命10年分で人殺しを引き受け、夢使いは寿命一日分で希望の夢を見せる。人間から見れば魔法としか思えないようなさまざまな超能力を持ち、人心の中に入り込んだりすることすら朝飯前の彼らでも、望まない人から勝手に寿命を取り上げることは極めて難しいらしい(一度「シャボン玉を割るのは簡単だが、割らずに中の空気を抜くのは難しい」という説明があった)。だから、寿命を抜き取る前には本人に十分に説明し、納得させてから行っているのだ。

設定としては、そちらの方が筋が通っているのではないか。

配役

2011年10月1日の時点でジャスティン・ティンバーレイクは30歳、アマンダ・サイフリッドは25歳、キリアン・マーフィー35歳、ヴィンセント・カーシーザー32歳、オリヴィア・ワイルド27歳、マット・ボマー33歳、アレックス・ペティファー21歳。全員25歳のはずなのに、役者の実年齢にはかなりばらつきがある。25歳で完全に廊下が止まるなら、役者は全員せめて20代にした方が奇異な感じが強調されて良かったのではないかと思う。

アマンダ・サイフリッドは「マンマ・ミーア!」でソフィ(メリル・ストリープの娘)役だった人。オリヴィア・ワイルドは「カウボーイ&エイリアン」でエラ役だった人。キリアン・マーフィーは「インセプション」でロバート・フィッシャー(大会社の跡取り息子)役だった人。ロバート・フィッシャーは覚えがあるが、あとの二人は記憶にあるような、ないような。

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