窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

ハンスはいい奴だった(アナと雪の女王)

大ヒットしているので、探すと恐らくいろいろな人がいろいろなことを書いているのだろうが、通常読みに行く人のサイト以外、殊更に探したりはしていない。が、知り合いに教えていただいた下記のサイトは面白かった。

こういう解釈もやろうと思えばできる、というひとつの例を示しているのだと思う。そういう意味で興味深かった。しかし、こじつけに近い部分もあり、あくまで思考実験の域を出ていないとも思う。

監督の発言を引用されているが、制作者側がどのような意図で作ったか、ということと、出来上がった作品から観客がどのように解釈できるか、というのは独立した話である。意図通りに作品が仕上がっているとは限らないわけだから。むしろ、制作者は予断と偏見を持っているから、「解釈」に関しては発言権はないと自分は考えている。

というのは、ハンスに関してはもともと特に不可解だと思ってはおらず、混乱もしていないからだ。

ますますのめりこんでしまう。「アナと雪の女王」』(2014/0/19)でも書いたように、彼は別に悪人ではない。どんな悪いことをやったのか? と疑問に思っている。アナが「裏切られた!」と彼に怒るのはわかるけど、それに同調して(一時はハンスを頼りにしていた)アレンデールの人たちが掌を返したように悪者扱いするのに対しては、同情の念を禁じ得ない。

それどころか、実はハンスはすごくいいことをしているのである。もちろん、急に雪に閉ざされたアレンデールを任されて、救援物資を国民に配ったり、アナを救いに行ったり、マシュマロウに立ち向かって倒したり、という点もそうだが、何より氷の城で、ウェーゼルトン公爵の部下に襲われたエルサが、彼らを殺そうとしているのを見た瞬間にQueen Elsa! Don't be the monster they fear you are!」と叫んだことだ(日本語版では「これ以上人々を傷つけてはいけません」のような文言だったと思うが、字幕では「モンスターになってはいけない」だったと思う。ここは字幕の方がいい)。

公爵の部下たちの態度にも確かに問題がある。王の代理であるハンスは「女王を傷つけるな」と厳命しているにも関わらず、エルサを殺せば冬が終わると思い込んでいるのか、彼女に刃を向けたのであるから、エルサにとっては正当防衛みたいなものである。しかし、そもそもはエルサがアレンデールを氷に閉じ込め、女王としての責務を放棄したことが原因で、しかも追いかけてきたアナとまともに話し合うことも拒否したのだから、エルサの側にも大いに問題がある。そう考えると、万一エルサが彼らを殺してしまった場合、彼女は本物のモンスターと認知され、以後どう言い訳しても国民からの信頼は得られないだろうし、エルサ自身も罪の意識から正常な精神状態を保てなくなる可能性もある。その上この二人はアレンデールの人間ではないのだから、国際問題に発展する可能性も大で、もしかしたらアレンデールという国自体が消滅する事態に陥ったかも知れないのだ。

ハンスはそれを止めたのだ。エルサも、アナも、アレンデールの人も、彼には表彰状のひとつも贈るべきである。アレンデールは彼の一言で救われたのだから。

ハンスについてわからないのは、アナにキスを求められた時、あっさりと自分の本心を打ち明け、しかも彼女が死ぬことを確認する前に、周囲に「アナは死んだ」と喋ってしまったことだ。恐らく自分がゲームに勝ったことを確信して、ガードがゆるくなってしまったのだろう。要は「詰めが甘かった」のだ。

アレンデールでは、「彼の処分は12人の兄が決めるだろう」と、国外退去だけで直接の処分はしなかったが、サウスアイランドの兄たちも、「お前は詰めが甘いんだよ」と言うぐらいで終わりなんじゃないだろうか?