窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

彼らが帰ってきた「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」

題名キック・アス ジャスティス・フォーエバー(Kick-Ass 2)
監督ジェフ・ワドロウ
出演ジャスティス・フォーエバー/アーロン・ジョンソン(デイヴ・リゼウスキ、キック・アス)、クロエ・グレース・モレッツ(ミンディ・マクレイディ、ヒット・ガール)、ジム・キャリー(大佐)、ドナルド・フェイソン(ドクター・グラビティー/物理学者)、リンディ・ブース(ナイト・ビッチ)、クラーク・デューク(バトル・ガイ、デイヴのオタク友達)、他
■TOXIC MEGACUNTS(スーパー悪党軍団)/クリストファー・ミンツ=プラッセ(クリス・ダミーコ、マザー・ファッカー)、オルガ・カーカリナ(マザー・ロシア)、他
■その他/モリス・チェストナット(マーカス・ウィリアムズ、ミンディの養父)、リンジー・フォンセカ(ケイティ・ドーマ、デイブの元カノ)、ギャレット・M・ブラウン(デイブの父)、クローディア・リー(ブルック、いじめっ子)、他
公式サイト『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』7.2[WED]DVD & Blu-ray RELEASE
制作USA、イギリス(2014年2月22日日本公開)
時間103分
劇場目黒シネマ

雑感

典型的な続編。スケールアップの名のもとに、話が広がって派手なシーンも増えるけど、テーマは散逸する。

前作は、フランク・ダミーコ率いる犯罪組織、およびこれを壊滅させるため立ち上がったビッグ・ダディとヒット・ガール、という図式があった。この犯罪組織は麻薬の密売に殺人が日常的な悪虐な組織であり、一方ビッグ・ダディは元警官、ヒット・ガールは幼い頃から殺人技術を叩きこまれた超一流の殺し屋で、この対立は真面目な……というか、血で血を洗う闘争である。どちらも警察に捕まりたくないアングラな立場であることは共通している(ビッグ・ダディ/ヒット・ガールの派手な扮装をする理由は不明だが)。途中でビッグ・ダディは殺されるが、ヒット・ガールが組織を壊滅させるという大アクションがあった。

もうひとつ、ヒーローを夢見る軟弱君がいて、コスプレをして何者かになった気になるものの、強い信念もないし、喧嘩も弱い。彼が事件に巻き込まれてヒット・ガールと接点ができるが、フランク・ダミーコにもクリスというバカ息子がいて、彼の扮するレッド・ミスト VS キック・アスというお笑い路線もあった。そしてヒット・ガール最後の大アクションではキック・アスも一役買う形で、不達の物語は収斂した。

本作は、父親を殺されたクリスがキック・アスらに復讐を誓うところから始まるが、元々彼らは「組織」を持っていた。壊滅的な打撃を受けはしたが、忠実な秘書は残ったし、刑務所の中とはいえ叔父もいる。そして当たり前だが犯罪と言うのはてっとりばやく金を儲けるためにやるのであり、いくら警察に賄賂を渡しているとはいえ、コトが公になれば捕まる。だから秘密裏に行なう必要がある。

……はずなのに、クリスが新たに作った組織は、遺産を湯水のごとく使ってならず者をかき集め、派手な犯罪パフォーマンスを繰り広げてダーティー・ヒーローになるというなんとも子どもじみたもので、こんなことをしていたらあっという間に警察に捕まるはずである。警察を追い払ったら軍隊がくる。逃げ道はない。

……はずなのに、警官は一方的にやられるだけで、軍隊は出てこない。警察は「コスプレしている者を全員つかまえろ」と見当違いの命令を出すだけ、それで誤認逮捕されたデイブの父が(組織の手の者にかかって)留置所内で殺されても警察は知らん顔。ちょっと話が破綻し過ぎている。

前作で組織を壊滅(要は皆殺し)させながらミンディが一切お咎めなしだったのは、事情を知るマーカスが、相手が犯罪集団だったこと、彼女が幼い少女だったこと、母親を殺した相手に対する復讐という事情があること、自分が彼女を引き取って育てること……などの理由から告発しなかったのだろうと思うが、今回は事件自体が派手であり、ジャスティス・フォーエバー側は一部を除いて大人が大勢おり(少年法で守られておらず)、しかも正義の味方を気取りたかっただけで情状酌量の余地があまりなく、また実際に死人も出ているのだから、一切お咎めなしはあまりにもおかしい。

ミンディがマーカスと二度とヒット・ガールにならないよう約束させられるくだりはともかく、ミンディが学校でなじめずいじめられたり、いじめの相手に仕返しをしたりするシーン、デイヴがヒーロー仲間のナイト・ビッチとそこかしこでセックスしまくるシーンなどは果たして必要であったのか。ヒーローだって人間だ、人間関係に悩むこともあるし、お年頃ならば性欲もあるだろう、ということなのかも知れないけど、これでは快哉を叫ぶほどカッコいいわけではないし、同情するほどかわいそうなわけでもない。中途半端である。

キック・アス」と2本続けて観たので堪能したが、これ一作を単独で観たらガッカリしただろうな、と思う。ミンディのアクションシーンはずば抜けてカッコよかったけどね。

今日の英語

  1. No, definitely not. ← definitelyの使い方は難しい。でも少し慣れた気がする。

配役

  • 大佐役のジム・キャリーは「ライアー ライアー」の主人公だった人だ! 「ライアー ライアー」は長く映画を観なかった僕が再び観るようになった記念碑的作品。ようやくつながった!
  • クローディア・リーは美人だ。正直、クロエ・モレッツより美人だと思うがな。もっと別の役を見てみたい。

過去記事