窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

安楽椅子探偵ではなかったのか?「ビブリア古書堂の事件手帖」

題名ビブリア古書堂の事件手帖
原作三上延
監督三島有紀子
出演■現代/野村周平(五浦大輔)、神野三鈴(大輔の母)、渡辺美佐子(大輔の祖母)、黒木華(篠川栞子(しおりこ)、ビブリア古書堂店主)、桃果(篠川文香、栞子の妹)、成田凌(稲垣、古書店仲間)

■回想/夏帆(五浦絹子)、高橋洋(絹子の夫)、東出昌大(田中嘉雄)、他
公式サイト映画『ビブリア古書堂の事件手帖』絶賛上映中!
主題歌サザンオールスターズ「北鎌倉の思い出」
制作日本(2018年11月1日公開)
時間121分
劇場TOHOシネマズららぽーと横浜(スクリーン5)

概要

  • 五浦大輔の祖母が亡くなり、遺品を整理している時に、夏目漱石の「それから」に目を留める。幼い頃、この本を許可なくさわってひどく怒られたことがあるのだ。手に取ると夏目漱石自身のサインがある。これは価値あるものかも知れないと思い、ビブリア古書堂を訪れて栞子と出会う。
  • 栞子は本を一瞥しただけで、サインが偽物であること、大輔が祖母に怒られたことを看破し、さらに祖母の人に言えない秘密にも気づく。栞子の洞察力に驚いた大輔は、ビブリア古書堂で働くことになる。
  • 栞子は、古書店仲間の稲垣と仲が良く、会えば話が弾んで途切れることがない。その話に入っていけない大輔は面白くない。
  • ビブリア古書堂にある最も高価な本は、太宰治の「晩年」の初版本、しかも署名入りのアンカット本だ。栞子は大庭葉蔵と名乗る男からこの本を譲ってくれるようしつこくつきまとわれ、ついに大けがを負わされてしまう……。

雑感

  • 古書を一目見ただけで持ち主の過去の不倫までをたちどころに見抜いてしまう洞察力や論理的思考力のある栞子が主人公なのだから、これは安楽椅子探偵もののミステリードラマなのかと思ったら違った。だって大庭葉蔵の正体は誰が見たってあの人しかいないのに栞子は(大輔も)それに気付かないのだ。そんなバカなミステリーがあるか。
  • 一方、回想シーンが異様に長い。こちらが本編なのかと思うくらいだ。絹子は、最初は、人懐こいただの定食屋の店員(亭主の女房だが)。田中嘉雄にも最初は客として愛想よく接するが、徐々に心惹かれていく演技が絶妙だった。
  • 絹子は、元々は恐らく文学少女だったのだろう。女学生時代は、小説を読んだり、映画を見たり、その感想を友人と言い合ったりすることが何より楽しかったに違いない。が、縁あって定食屋に嫁ぎ、以後は買い物、仕込み、接客、掃除などに忙殺される日々。亭主は働き者だし、店もソコソコ流行っていてまあお金にも不自由はしない。何も文句をいう筋はない、幸せな生活だ。そんな中で心の奥底に封印していたことが、田中嘉雄との出会いで表に出て来てしまったのだろう。こうなったら誰にも止められない。
  • 野村と黒木のダブル主演と喧伝されているが、本当の主役は夏帆。「タイムスクープハンター」の頃に比べて、いい役者になったなあ。

監督

(2019/9/18 記)