「最後に笑うのは誰か」というが、一番笑うのは間違いなく観客だ。今年最高の一本といっていいのではないか。ついでに三谷作品としても過去最高の出来栄えと思う(といっても「ステキな金縛り」しか知らないけどさ)。今年100本目だが、節目にいいものを観られた。
題名 | 清須会議 |
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原作 | 三谷幸喜 |
監督・脚本 | 三谷幸喜 |
出演 | ■本能寺の変/篠井英介(織田信長)、染谷将太(森蘭丸)、中村勘九郎(織田信忠)、浅野和之(明智光秀)、 ■織田の遺族/妻夫木聡(織田信雄)、坂東巳之助(織田信孝)、伊勢谷友介(織田三十郎信包)、鈴木京香(お市)、瀬戸カトリーヌ(小袖、市の侍女)、剛力彩芽(松姫、信忠の妻)、津島美羽(三法師)、 ■五宿老/役所広司(柴田勝家)、大泉洋(羽柴秀吉)、小日向文世(丹羽長秀)、佐藤浩一(池田恒與)、阿南健治(滝川一益)、 ■織田家臣・その他/中谷美紀(寧)、天海祐希(枝毛)、戸田恵子(なか)、浅野忠信(前田利家)、寺島進(黒田官兵衛)、松山ケンイチ(堀秀政)、市川しんぺー(佐々成政)、梶原善(小一郎)、近藤芳正(義兵衛)、でんでん(前田玄以)、西田敏行(更科六兵衛)、他 |
公式サイト | 映画『清須会議』公式サイト |
制作 | 日本(2013年11月9日公開) |
劇場 | イオンシネマ新百合ヶ丘 |
内容紹介
1582年7月16日(旧暦では6月16日)に開催された清須会議(「清州」会議とも書くが、作品では「清須」の表記が用いられている)の様子を映画化したもの。多少喜劇化してはいるが、ほぼ史実通りと思われる。日本史上初めて、会議で歴史が動く。最後に笑うのは誰か――
雑感
一番笑うのが観客であることは間違いない。こんなに楽しく観られて、こんなに引き込まれた作品は久しぶりだ。ここのところ眠気を誘う作品が多く、疲れているのか、映画をたくさん観過ぎて飽きてきてしまったのか……などと考えていたのは全くの杞憂だった。面白い作品は面白いのだ。
ほぼ史実通りなので、ネタバレも何もないと言いたいところだが、だからこそ三谷がどのように解釈し、切り取ったかという点がより重要になる。書きたいけど書くべきではないとも思う。
一点、織田信忠の妻を松姫としたのは驚いたが、調べてみると松姫とする説もないことはないらしい。ここで敢えて少数派の説を採ったのはちゃんと理由があった。これがあとで大きく効くことになる。これは目のつけ所がうまいと思った。
細かいエピソードはともかく、大きな流れは皆が知っている通りなのだが、この作品を作品たらしめているのは、登場人物の性格をユーモラスに描き分けている点だろう。柴田勝家の勇猛・実直な点も、羽柴秀吉の小賢しい点も、丹羽長秀の理論派な点も、池田恒與の日和見主義も、知っているといえば知っている通りなのである。しかし、そこは絶妙なセリフと役者の絶妙な演技によって、その人物像がリアルに浮かび上がってくるし、おかしくてたまらないのだ。
さて、最後に笑うのは誰か? 会議で決まった内容に即して言えば、羽柴秀吉が勝ったのは間違いない。これは映画を観なくてもわかる。しかし実は意外な人物が勝利宣言をしていた……。これは気づかなかったが言われてみれば納得。作家のすごさである。ところで、僕は、その人よりも誰よりも、最も笑ったのは柴田勝家ではないのかなあ、と思う。だって自分が一番手に入れたいと思っていたものを、この会議の結果、手に入れられたんだもの。嬉しそうに清須を去っていく姿がおかしかったね。
もう1〜2回は劇場で観たい作品である。
配役
過去記事
- めちゃくちゃ面白い「ステキな金縛り」(2011/10/29)
リンク
- 三谷幸喜監督による解説&写真付き『清須会議』全キャスト一覧(シネマトゥデイ)
- 清須会議に学ぶ三谷幸喜流の「会議論」(東洋経済、2013/11/11)