窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

TV「みをつくし料理帖」総論

テレビドラマを滅多に見ない自分が、このドラマを見る気になったのは、原作を愛読していたこと、黒木華が好きな女優で、こうした役に合っているのではと思えたこともあるが、何より脚本が藤本有紀だと知ったからだ。大河ドラマ平清盛」を見た時、神脚本だと思い、この作家の作品をもっと見てみたいと思ったのだ。

結論を言えば、本作は、面白くないことはなかったが、別段、感心もしなかった。原作は全10巻の長編だから、全8回のドラマで描けるのはわずかなのはわかるが、佐兵衛は生きていたとわかったところで終わる、というのはハッピーエンドといえなくもないが、そのあとが気になるし、あさひ太夫との関係も、小松原や源斉先生との恋愛(?)も、中途半端なまま。なまじ原作を知っているからそう感じてしまうのかも知れないが、消化不良の感を拭えない。天満一兆庵のことなどはばっさり削って、つる家の女料理人が江戸一番を目指す、という話でもいいように思うが、それでは「みをづくし」にはならないのだろう。それにしてももう少しうまい料理の仕方はなかったのか?(それとも続編を作りますというフラグか?)

芳や種市、おりょうら澪の周囲の人の澪に対する好意がわかりやす過ぎて、少々おおげさに感じられるし、単調。采女宗馬の性格の悪さもわかりやす過ぎて、単調。ついでにいえば、永田源斉先生の澪への慕情も、わかりやす過ぎ。周囲の人は(澪自身も)なぜか気づかないのだけど。

ひとは、あそこまで自分の考えを顔に書いたりしないし、そもそも人間の感情は複雑で、良いことも考えれば悪いことも考えるもの。そうした複雑な内面を描いてこそ深みのあるドラマになると思うのだが、そんなわけで、「これ本当にあの藤本有紀が書いたの?」と思ってしまった、というのが正直なところだ。

ただし、黒木華が「美人枠」で登場していたのは嬉しかった。黒木華は美人だと思うが、「まほろ駅前番外地」「小さいおうち」「銀の匙」「真田丸」など「不美人枠」で存在感を発揮してしまい、ご本人が不美人だと思われているのが不憫でならなかったのだ。

一方、あさひ太夫成海璃子は失礼ながらミス・キャストだろう。美人には違いないが、声と所作が、とても「吉原一の花魁」にふさわしいとは思えない。もっとも、誰なら相応しいのかといわれると難問ではある。美人で、上品で、江戸時代の所作がきちんとできて、声がきれいな人。2013年のテレビ朝日版(北川景子が澪役、未視聴)では貫地谷しほりが演じたそうだ。なるほど、貫地谷しほりなら納得だ。

(2017/11/13 記)