窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「カムカムエヴリバディ」(57):ジョーの帰阪

第12週「1963-1964」(金)

放送日

  • 2022年1月21日

概要

トミーからデビューが延びたことを知らされたるいは、その夜、ジョーに手紙を書く。何通も書く。が、ジョーからの返事はない。

ジョーは、日常生活には何の問題もないが、トランペットを吹こうとすると、うまく吹けないのだ。笹川社長は怒っている。本当に病気なのか? と。奈々は、アメリカ帰りのいい医者がいるから……と、春まで時間の猶予を与えてくれるよう父親を説得し、ジョーをあちこちの医者へ連れていくが、どこへ行っても原因不明。ついにタイムリミット。笹プロはジョーを諦める決断をし、ジョーは大阪に帰る。

翌朝、Night & Day の店の前でボーっとしていると、そこへ豆腐を買いに来た? るいとバッタリ会ってしまう。ジョーが大阪にいることに驚くるい。そこへ奈々が駆け寄ってくる。心配だからきちゃった、と。それに小暮さんには私からも話をしないと……

るいは、東京でジョーが社長の娘としょっちゅう二人で出歩いていて、社長がそれに怒ってデビューが遅れているという噂を聞きましたが、私は信じていません……と話し出すと、ジョーは、噂じゃない、奈々を好きになった、お前とは終わりだとるいに告げる。

雑感

まあ、あまり語りたくない回。ジョー、いくらなんでもそれは言っちゃアカンやろ、としか。

ジョーの問題

ジョーにはトランペットしかなかった。実際、トランペット以外のことは、抜けているというか、ダメ男であることはこれまで何度も示されている。それは本人も自覚していて、トランペットがあればこそ、自分は何者かになれて、結婚もできるが、これがダメなら、るいと自分をつなぐものも何もないと思い込んでしまったのだろう。twitterでは、違う、るいとお前を結び付けているのは、ホットドッグとケチャップのシミのついたシャツだ、という声が次々にわいていた。

ジョーの病気は職業性ジストニアではないかという声も多かった。精神的な病に関しては現在よりはるかに理解が遅れていた時代だから致し方ない面もあるが、社長の「本当に病気なのかねえ」「大損なんだよ、こっちは!!」と言った言動が、拍車をかけていたのではと思われる。

ただ、社長は「重圧に耐えられなくなっている」、奈々は「急に環境が変わって疲れている」などとも言っていて、そこまでわかっているなら、たとえば少し休暇をやるからいったん大阪へ帰って彼女に会って来い、とか、そういう手を打とうとしないのだろう。トミー(あるいは、他のジョーがかつて交流のあったジャズメン)を呼ぶとか、できることはあると思うのだが。

奈々の立ち位置

奈々はジョーを(異性として)狙っているわけではなく、ジョーのトランペットに惚れ込み、東京で光らせたいという気持ちと、社長は使い物にならなくなったら冷静に(というか、非情に)切り捨てるのに対し、なんとか本人に寄り添って、復活の道を粘り強く探そうとする、要は「いい人」であることが判明。twitterでは掌を返したように彼女を持ち上げるtweetが寄せられた。

ただ、僕はまだ警戒心を緩めていない。ジョーを連れて行ったプロダクションの人間として、ジョーを一人で追い返すのではなく、ちゃんと小暮さんに事情説明するためについてきたのはいい。しかしなぜこんな朝早く? るいが豆腐を買いに来たということは、かなりの早朝だ。もちろん Night & Day の営業時間ではないし、小暮さんはまだ寝ているだろう。たまたま眠れなかったジョーが外に出ていたからよかったけど、そうでなかったらどうするつもりだったのか。人を訪ねる時間じゃない。(そもそも新幹線ってそんな早朝に大阪に着くような便はないだろう。夜行で来た?)

ドラマツルギーとして

このジョーのセリフは、るいが安子に「I hate you.」と言ったことと対になっているのだと思う。本心は嫌ってもいないし別れたくもないけれど、口に出てきた言葉は真逆だった。また、ジョーがるいとの結婚の許可を取りに来た時、和子が言いかけた「いつまでもおられても困る」も同じ。

和子のセリフは平助に遮られ、和子は途中で言い方を変え、互いの本心が伝わり、事なきを得た。安子はるいの言葉を真に受けて家を出て行ってしまい、本当の意味での崩壊が始まった。るいは、安子と同じくジョーの言葉を真に受けて、離れてしまうのか、「何言っているの、私は別れたくないわよー」と騒いで事態をひっくり返すか。

まあ、この日のうちに小暮は事情を正確に知ることになるだろうし、そうすればその内容はすぐるいに伝わるだろうから、早晩誤解は解けると思うが。奈々もジョーとの交際は否定するだろうし。
(2022/01/23 記)


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